第16章 荒波
「えっ?彼、行くな って?」
翌日、またまた哀ちゃんと阿笠博士の家でお茶会
今日は夕方から用事があるみたいで赤井さんは今家に居る。
『うん…』
「どうしてかしら?」
『その日はほぼ一日家を空けるみたいでさ、留守番を任せたいみたい』
「あら、随分と勝手ね。本当なの?」
『えっ…?』
「その…浮気、とか…」
そう言って、手に持っていたティーカップを口に添える哀ちゃん。
『あー…それは多分、大丈夫みたいだよ』
「それなら良かったわ。だけど、貴女は行きたいのよね」
『うん、本当はね』
そう、折角赤井さんと時間が合うという中
今日敢えて哀ちゃんとお茶会をしているのは
勿論この時間が好きなのもそうだし、どうせここを盗聴してる赤井さんに行きたい意志を遠回しに伝えるためでもあり…
「まあ、あの広い家じゃ心配になるのも分かるけれど、それなりの防犯装置ぐらい着いているわよ」
『確かにそうだよね…』
「ええ。だから、後悔しない様に ちゃんと彼を説得させなさいね」
『はい!』
阿笠博士の家を後にして工藤邸に戻る。
『赤井さん、帰りました〜』
「今日は楽しめたか?」
『はい!』
「そうか、そいつは何よりだ」
帰るなり直ぐに赤井さんが来てくれて、髪の毛を耳に掛けてくれながら
どこか安心した様に笑ってくれて。
『今日は夕方からでしたよね』
「ああ、そうだ。だからそれまで時間はまだあるな」
『ん?』
耳元に置かれていた手が首筋まで来て、チュッとゆっくり唇が重なる。
『んっ…』
「みなみ…」
唇が離れ、私の名前を呼ぶ赤井さんの顔はどこか凄く色っぽくて。
そのまま抱き上げられソファに座る赤井さんの上へ。
再度唇が重なり、湿ったキスに変わっていくと床に置いたバッグから規則正しいバイブ音が鳴り響く。