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某国立新高等学校

第13章 浅葱医師


それから数日後、私はN県の山中のバス停にいた。

一日に数本しかないバスだ。
(本当にここで良かったかしら?)


その時、背後の茂みからガサゴソ音がしたので振り向くと、前髪の長い男の子が立っていた。

「浅葱さん?だよね?」

私が頷くと、彼は手招きをしてまた茂みの中へ入っていった。追う私。


「尾行されているかもしれないから念の為『けもの道』を行くよ、歩きにくいけど頑張ってください。」

彼の先導で道なき道を小一時間ほど歩き、やっと蕗田先生の別荘にたどり着いた。



恩師である蕗田先生からの留守電メッセージは『大事な話をしたい。』との事で………思うところがあった私はすぐに休暇を取ってこのN県までやっ手来たのだ。

懐かしい蕗田先生と奥様に暖かく迎え入れてもらった応接には先ほど案内してくれた少年、そして同じ年くらいの女の子が座っていた。


「『国立新高等学校』分かるね?」

想い出話もそこそこに蕗田先生は切り出した。


私は黙って頷いた。


『異次元の少子化対策』と銘打ってある大臣が強引に進めた無謀な政策――――――――――

その大臣と秘密裡に繋がっている私の勤める『金満総合病院』の院長は自分の病院からその高校の『校医』を提供すると。


人道的にも医学的にも無茶苦茶なこの政策はとても賛同出来るものではなかったが…………

研修医の安い給料の中、奨学金の返済で日々の生活にも困窮していた私は院長の甘い言葉につい乗ってしまった………‥‥


鎖に繋がれて家畜以下の扱いを受けている生徒たちの姿は、呼ばれて行く度に目を覆いたくなったが………


「黙って言う事聞いていれば奨学金は全部完済してやるし、昇進もさせてやる。」

金満院長はこう言って私を持ち駒の一つとしたのだ。
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