第5章 第一学年二学期
――――今年の3月。
家族でお姉ちゃんの医学部合格祝いとついでに私の高校入学祝いをした。
テーブルいっぱいの上寿司!!
「わあ、お父さん、お母さんありがとう!
ほら、果音もお礼言いな!」
「…りがとぅ………」
「もお〜果音はいつまでたってももさーっとして!よく入れてくれる高校あったよねえ〜」
私の頭を小突くお姉ちゃんを見て親は満足気に頷いてる。
(………お魚キライ……お寿司じゃなくてハンバーグが良かったなあ。でも私の言う事なんて聞いてもらったことないし。いつだって主役はお姉ちゃん―――)
私はもそもそとカンピョウ巻きを食べながら思い起こしていた。
――――小さい頃の誕生日。やっと買ってもらえた欲しかった可愛い着せ替え人形。
何でかお姉ちゃんも同じお人形を買ってもらってた。私のよりも豪華なドレスを着たやつ。
複雑な顔をしていたら、
「あんただけもらってお姉ちゃんには何もないのは可哀想だと思わないの?ほんと、あんたは意地悪な子だね!」
ってお姉ちゃんの誕生日には私は何ももらってないのに!
そして「ドレス一枚だけじゃつまんない!」って私のお人形の服はお姉ちゃんに剥ぎ取られて丸裸にされてしまったし。
あとおばあちゃんが私に買ってくれた服も、可愛いお姉ちゃんの方が似合うからってわざわざお店に持って行ってサイズ交換してお姉ちゃんに着せてたっけ。
外食も家族旅行も私は何故かお留守番…………
極めつけは私が隣の部屋だと受験勉強の気が散るって(別に騒いでないのに)私の部屋は狭くて暗くてエアコンもない物置部屋に移されちゃったし!
アタマと顔の出来の悪さから家でも学校でもずっと冷遇されてきた私。いつしか街をフラフラ徘徊して時を潰していた。お小遣いなんてもらってないからお腹が空いたら店から盗んで食べてた…………
当然すぐ補導されて怒られてまた飛び出しては捕まっての繰り返し―――――
「ねえ、あんたさあ。」
マグロのお寿司をクチャクチャさせながらお姉ちゃんは私に言った。
「もう、帰って来ないでね!」