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某国立新高等学校

第17章 フリージア


「変わらないなあ‥‥」

私は大きなスーツケースをゴロゴロ転がしながら見慣れた商店街を歩いていた。

あれから―――私は定時制高校に通いながら少しずつモデルのアルバイトを始め、幸運にもロンドンのエージェントにスカウトされて卒業後は向こうで仕事をしている。

今日は1年ぶりの帰国だ。


『食堂りりぃ』と真新しい看板の掛かったお店の戸を開けた。



「いらっちゃいませえ〜〜」

可愛らしい男の子の声で出迎えられた。


「希望(のぞむ)くん!大きくなったねえ〜」

「おかえり!果音!」

「莉里!食堂開店おめでとう!私たちの中で一番先に夢を叶えたね。」

厨房から飛び出してきたエプロン姿の莉里はよいしょと息子の希望くんを抱き上げた。

「まだまだこれからだよお〜やっと開業まで漕ぎ着けたって感じ!」

「希望くんのママもしっかりやってて莉里すごいよ!」

「あはは、みんなに助けてもらってるからね。」


莉里が指し示した食堂の客席には、懐かしい顔が揃っていた。

「おかえり〜果音!!」

なぎさ、トッド、いち子に賢太そして蕗田先生ご夫妻も。

今日は莉里の食堂開業祝パーティ(貸切)なのだ。

「あたしより果音の方がスゴいじゃん。海外でバリバリやってんだから!」

「スーパーモデルの凱旋だあ!」

「トッドったら……私なんてまだまだヒヨッ子だよお、ランウェイまではまだまだ遠いよお。」


「まずは乾杯しよ、乾杯。」

なぎさが立ち上がって飲み物の準備を始めた。

「食堂の内装はあまり変わってないんだね。」

「うん、元のおばあちゃんのお店、ほとんどそのまま。変えたのは看板と古い水回りを少しかな。
おばあちゃんもまだまだお店出てくれるし。」

優しい元の食堂のオーナーのおばあちゃんがニコニコと小鉢を運んできた。

「おばあちゃん、こちらにいる時からずっとありがとう!」

「いやいや、娘も息子もたくさん増えて嬉しいよ。孫までもね。」

5年前、莉里のお腹にいた子は「希望(のぞむ)くん」と名付けられ、みんなに囲まれて元気に育っている。


なぎさとトッドは専門学校でそれぞれメイクアップアーティストとデザイナーを目指している。

いち子と賢人は学部は違うけど同じ理系の大学に進学した。


そして――――――
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