第2章 キミを探しに。
「『いつも、ありがとう。作曲勉強したから。私の初めて、アンタにあげる』」
つい、楽譜の上に書いてある文章を読み上げる。
これはどう考えても皐月の文字だ。見たことないけど藍は直感的にそう感じた。
あのキツネも、こういうことするんだ。
「・・・ふーん。まぁ、初めてにしては、上出来じゃない?」
綺麗に書かれた音符、記号を見て、思わず笑みが漏れる。
「・・・ラーララ、ララーララ、ララララララ、ラララーララー」
せっかくもらった曲、丁寧に歌詞をつけたい。今はラでいいや。藍は何も考えずにのびのびと歌った。
最後まで歌い切ると、なんか胸が暖かい。これが、ボクの歌いたい曲なんだ。藍は暖かい冷たい胸を押さえた。
決めた。皐月を作曲家にしよう。
そう思った瞬間、
「なかなか上手に歌うのね。美風」
強気ないつもの声が聞こえた。