第2章 キミを探しに。
「博士、今は何月何日?ボクの設定、ちょっと狂っているんだ。」
カプセルにつながっているキーボードをいじっている博士に問うと、今は九月七日だと適当に返信された。
・・・一日ずれている。藍にでも修正ができるようになっているから、間違いを急速に直す。しかし直した瞬間、何もやることがなくなった。
「博士、ボク歌ってくる」
「は?・・・ファンに見つかるなよ」
「わかってる」
来た道を戻り、いつものマリンブルーのカーディガンを羽織って外に出る。暖かい。
そして、愛音が言っていた場所、噂の人目につかない時計台に行くと、やっぱり誰もいなかった。
茶色い、錆びついた時計台。いつ止まったかもわからない、17時を指している時計。
なぜかいる茶色い髪の見覚えのある男。
寿嶺二だ。
「・・・レイジ」
藍がぽつりと名前を呼ぶと嶺二は驚いた顔で藍を見た。そして、久しぶり。それだけ言って帰って行った。
なぜ嶺二は一言のこしてすぐにこの場を去ったのか考えていると、ふと思い出した。
愛音は、ここでよく嶺二と歌っていたんだったけ。
「・・・歌おう」
愛音のように。