第1章 人嫌いなキミ
「あの瑠璃川財閥の瑠璃川皐月様が失踪してから早一週間が経過しました。
しかし、皐月様はいまだ発見されていません」
楽屋のTVから流れるニュースで皐月の話題がたくさん上がる。やはり瑠璃川財閥も、大したことないなと藍はキーボードをたたいた。
「いやいやー・・・怖いねぇ、誘拐かなぁ。」
紙コップでお茶を飲みながら台本を読みながら呟く嶺二。同時に三つのことができるんだから、器用貧乏とはこのことだろう。
「誘拐?その可能性は低いんじゃないかな」
藍はもうすぐ収録時間だからPCをパタンと閉じ、嶺二に返事を返すと、なんでなんで?と不思議そうに返事が返ってきた。
「だって、失踪してもう一週間だよ?もし誘拐されていたらもう身代金がどうのこうのって電話が来ていると思うよ。身代金を要求しない誘拐犯なんて、いるの?」
ギシッ、とソファーから立ち上がり、鏡の前で衣装を直す。すると、確かにそうだな。と本から顔をあげながらカミュが会話に加わった。
「美風の言うとおりだな。身代金を要求しなければ誘拐した意味などない」
愚民の割には良いことをいうな、と藍に余計なひと言を加え、カミュも鏡の前で衣装を直し始めた。
「へぇ、アイアイもミューちゃんも物知りー」
ゆらゆらと左右に揺れながら言う嶺二を見ていると藍は皐月が今何をやっているのかとても気になった。