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乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい

第3章 きっかけは教科書


「ん?」

翌日。その日は音楽の授業だった。
授業終わりに念の為忘れ物がないか机の中を覗くと、中には音楽の教科書が。

私のは今机の上に出ているから、きっとこれは誰かの忘れ物だろう。

名前とクラスが書いてあれば直接届けて、書いていなかったら職員室前にある落とし物入れに入れておこう。
そう思い机の中から教科書を取り出し、裏返して名前を確認する。

名前を書く欄には、やる気のなさそうな、どこかへにゃりとした字で『旭敬人』と書いてあった。

名前を見た瞬間、私の心臓がドッと音を立てた。
心做しか体温が上がった気がする。教科書に書かれている名前から、目が離せない。
私は浅い呼吸を繰り返していた。

この教科書の持ち主は、私と同じクラスではない。というか同級生でもない。先輩だ。

実際に会った事はないが、私は姿を思い浮かべる事が出来るし、彼が二年三組の生徒である事も知っている。


旭敬人は──攻略対象であり、私の推しだからだ。
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