第9章 揺らぎ
三「そうか?まだ挙げられるが…」
「ぐすんっ…い、いいです…恥ずかしい…」
三「ハハハ。でも…これで俺の気持ち伝わったか?こんな状況で言うのは少しずるい気もするが」
「ひっく…はい…」
三「お前のベンチからの声援も、バスケの知識も、バスケ部への想いも、全部ちゃんと伝わってるし役に立ってる。少なくとも俺には」
「ううっ…ぐすっ…ひっく…うわぁーん!」
は素直に嬉しかった。
何もないと思った自分を、好きと言ってくれて、努力を評価してくれたことが、素直に嬉しかった。
三「あぁっ!悪りぃ!余計に泣かせるつもりは…」
三井はおろおろしながら涙を拭いたり、背中をさすったり、一生懸命声をかけたりした。
一通りが泣き尽くしたのを確認すると、ようやく三井も落ち着いた。
三「落ち着いたか?」
「はい…」
三「ベンチ掃除しに行くのか?」
「試合させてもらったし、お世話になったからします…」
三(そういうところが、俺は好きなんだ)
三「分かった。俺も手伝う」
「いやでも三井さん疲れてるだろうし…」
三「平気だ。お前に散々鍛えられたからな」
「フフ…ありがとうございます」
2人は掃除を始めた。
始めてしばらくは無言だった。
しかしその沈黙を最初に破ったのは三井だった。
三「なぁ」
「はい?」
三「その…」
三井は恥ずかしそうにもじもじしている。
「??」
三「名前…呼んでいいか」
「え??」
三「い、いや、さ、桜木は名前でお前のこと呼んでるだろ?お、俺ももう天羽とか、お前とか、呼びたくねぇし…」
三井は恥ずかしいのか早口で言った。
「フフ…もちろん、いいですよ」
が笑って快諾すると三井は顔を真っ赤にした。
三「あ、ありがとよ……」
「アハハ!三井さん顔真っ赤!!」
三「う、うるせぇ!!」
三井はに背を向けたものの、耳まで赤くなっていたので全く隠せていなかった。