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テニスの王子様 短編まとめ

第2章 ぶきっちょベイベー




跡部景吾という男に不本意ながら恋心を抱いてしまったのはいつからなのだろう。

正直、私はこの男が本当に苦手、というよりも嫌いだった。
かっこよくてお金持ちでテニス部の部長でおまけに生徒会長、と今時のライトノベル並のスペックも然ることながら、最たる理由はその性格だった。

自己中心。超のつくほどの自信家。ナルシスト。
何時でも堂々といるあいつが本当に嫌いだった。というよりも妬ましかった。大した努力もせずにトップに立っていると思っていたから。だからいつか絶対にぎゃふんと言う時が来るだろうと思っていた。

そんなあいつの意外な姿を見たのは、つい一ヶ月ほど前。
定例会で必要な資料を印刷し終わり、最終下校間際の人気のない校舎を歩いていると、テニスコートのスポットライトが煌々とついているのが見えた。
消し忘れるなんて、やっぱりテニス部は馬鹿ばっか!とテニスコートを覗いてみると、そこにはあいつがいた。

床に散乱したテニスボールの数を見るに、かなりの長い時間自主練をしていたのだろう。まるでタンポポ畑のようにコート一面が黄色で覆われていた。その中で跡部は汗を拭う時間すらも惜しいとばかりに何度も何度も同じフォームで同じサーブを何回も打ち続けていた。

才能だけで生きていると思っていた男の、意外な一面。
私はそれ以来跡部景吾に恋をしてしまったのだ。なんとも単純な理由だ。


「……それで、ここのコピーを…」

生徒会に所属していて本当に良かったと思う。普段跡部は跡部様ファンクラブとかいう女の子たちに囲まれていて話すことはおろか、近づくことすらも困難で。けれど生徒会室にいればどんな時でも跡部に話しかけ放題だし、盗み見し放題だ。

会長席は窓際の一番日当たりの良い席で、天気の良い日は跡部の栗色の髪の毛が太陽の光に反射して、宝石の様にキラキラと輝く。それは本当に綺麗で、同じ人間でもこんなに個体差があるものかと神様を恨みたくなるほどだ。

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