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テニスの王子様 短編まとめ

第1章 私を想って


「出来た!」
キャッキャと童心に帰ったかのようにはしゃぐ彼女の声に意識が戻される。
彼女の手の中には少し不恰好だけど立派なシロツメクサの冠が握られていた。

「初めてにしてはうまいと思う」
「でしょ!」得意げに笑ってから、彼女はできたての冠を俺の頭に乗せた。

「幸村、今日お誕生日でしょ」
「なにそれ、誕生日プレゼント?」
「今年優勝できなかったけど、幸村が一番がんばったから。私の中では幸村が優勝!」
かっこよかったよ、とそんなキザなセリフを恥ずかしげもなく真面目な表情で言われたら逆にこっちが照れてしまう。
ぼーっとしているようで、人の感情の波を汲み取ることに非常に長けている。
俺はそんな彼女だからこそ好きになったのかもしれない。

「…ありがとう。でも、優勝の冠は月桂樹で編むんだよ?」
「嘘!?知らなかった!」
「馬鹿だなあ」
けらけら笑う俺に先ほどとは打って変わり不満そうに眉間を寄せる君。

「台無し!文句言うなら返して!」
「ごめんごめん、お詫びに俺も何か作ってあげるよ」
「本当?作って作って!」
さっきまでプリプリしていたくせに、その顔にはもうすでに笑顔が戻っていて。ころころと変わる表情は本当に見ていて飽きない。
そんな君をずっとそばで見ていられたら、なんて願いを込めて丁寧にシロツメクサを編んでいく。

「…出来たよ」
小ぶりだけれどエタニティーリングのようにぐるっと花が取り囲んだ、指輪。我ながら力作だと思う。

彼女の左手をそっとすくい上げて、すべらかな薬指にシロツメクサの指輪をつける。
「これは予約。いつか本物をあげるから、この指は絶対に開けておいて?必ず迎えに来る」

見上げた彼女の顔は6月の薔薇よりも真っ赤で。
「…こんなの、ずるい。かっこよすぎる」
「かっこつけたい年頃なんだよ」
と微笑めば、彼女も釣られて笑みを浮かべる。

嗚呼、愛おしい君。
笑う時も、悲しむ時も、これから先、ずっと二人で同じ感情を分かち合って生きていこう。
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