第64章 幸福
『ちょっと完璧すぎ。なんで指輪まで用意してるの?』
「婚約指輪を用意した時に一緒に買っておいた。」
『え、プロポーズ断られたらどうするつもりだったの?』
「……それは考えていなかったな。」
私が断るだろうとは微塵も考えていなかった零くんが面白くて
つい笑ってしまった。
「…ばか、笑うな。」
『ご、ごめん……ふふっ。』
1人でクスクス笑っていると
零くんは私の持っていたブーケを近くの椅子に置き
小さいサイズの方の指輪を手に取り、私の薬指にはめてくれた。
そして私も零くんの男らしくて逞しい手を取り
同じように左手の薬指に指輪をはめた。
「では…新郎、新婦のベールをあげて下さい。」
神父さんに言われた通りに私のベールの裾を持って
零くんはゆっくりとベールをあげてくれた。
私の視界は明るくなって零くんの顔がはっきり見えたんだけど
なぜか少し赤らんでいるようだった。
「…綺麗だ。」
『っ、え?』
「ベール越しで見るよりずっといい。
最高に綺麗だよ、美緒。」
顔を赤らめながら私を綺麗だと言う零くんは
とても優しい笑顔でそれもまたカッコよくて…
きっと私の頬も同じように赤く染まっているだろう。
「それでは…誓いのキスをどうぞ。」
神父さんの言葉の後、零くんは私の両肩にそっと手を置いた。
「美緒…愛してる。」
『私も……愛してるよ、零くん。』
私の目を真っ直ぐに見つめながら愛の言葉を囁いた零くんはフッと笑い
ゆっくりと顔を近づけてきて私の唇にキスをした。
そのキスは一生忘れることはないだろうと思うくらい…
とても優しいものだった。