第63章 復帰
…。
どうしよう……
今すぐ零くんに抱きつきたくなるくらい嬉しい…。
心臓ごと持っていかれた感覚がした。
嬉しくて…嬉しすぎて胸が苦しい。
ニヤける顔が抑えられない。
「こんな恥ずかしいこと言わせるなよ…。」
『ふふっ、ごめん。
でも私も2人に報告しに来たから一緒だね。』
「知ってる。僕のこと話してるの聞こえた。」
『盗み聞き?ひどい。』
「録音したくなるくらい可愛かった。」
…それはやめて。恥ずかしすぎる。
一定の距離を保ったまま話していると、
零くんのスマートウォッチが振動する音が聞こえて
彼はスッと立ち上がった。
「ポアロに行く時間だ。」
『うん…頑張って。』
「美緒もな。」
最後まで目を合わさずにあいさつをしてから
零くんは墓地の出口の方へ立ち去って行った。
…父さん、母さん。
きっと彼と結婚する事で
今日みたいに外で普通に会話できない時もあると思うんだ。
でも心配しないでね?
私は全然平気だから。
だって…2人で一緒にいる時には
たくさんの愛の言葉を私に囁いてくれるんだよ?
それは言葉だけじゃなくて
行動や表情、態度でも示してくれるの。
そんな零くんの事が本当に大切で…大好きなんだ。
これからの人生…彼と一緒に歩んで行くからね。
父さんと母さんのことを思いながら
フッと空を見上げると雲ひとつない青空が広がっていて
まるで零くんの瞳のようだった。
しばらくぽーっと空を眺めたあと、
私も仕事に戻る為にベンチから立ち上がった。