第63章 復帰
退院してから1ヶ月が経ち季節は春。
私は鈍っていた体を必死にトレーニングして
怪我をする前と同じ感覚をなんとか取り戻すことができた。
…それは今までで1番大変だった。
いつもなら余裕で走れる5キロのランニングも
半分くらいの距離で息が上がってきたし
腹筋や背筋を鍛えている時も三分の一くらいの回数で筋肉痛になった。
それでもなんとか調整していって
今日からようやくボディーガードの仕事も再開する。
今までデスクワークだけだったから本当に辛かった…。
東社長もひどい怪我をしたけど
すでに万全の状態まで回復していた。
松田くんと伊達くん、
諸伏くん、風見さんも事件で負った傷は
私が眠っている間に完治していて彼らも後遺症はなかったそうだ。
その事を聞いた時はすごくホッとした。
誰も死ななくて本当によかったと心から安堵した。
しかし…
色々と落ち着いてから事件のことを思い返してみたんだけど、零くんが私のスマホを拾ってくれたおかげで私の居場所が分かり、
助けに来てくれたことには感謝した。
でもなんでスマホの暗証番号知っていたのかを聞いたら
こっそり見たことがある、なんて言うから少し怒った。
いや、知ってたおかげで助かったのは分かるけど
それはそれ、これはこれって感じじゃん?
私が怒ったことで零くんはひたすら謝ってくれたから仕方なく許すことにした。
まぁ別に見られて困るようなものは何も入ってないからね…。