第58章 公安
酷いことを言ってしまったとは思う。
でも………
何も話してくれないくせに
私のことを知りたがるのはなんだかすごく理不尽に思えて
彼を突き放すような事を言ってしまった。
多少の後悔はあるけど
今は先ほど電話をくれた人がいる場所に向かうことを優先し
私は自分の愛車に乗り込み、車を発進させた。
ーーー…
数十分間車を走らせて到着した場所は
私の両親の墓がある墓地。
先ほどの電話は、墓地の管理人からだった。
両親の墓の元へ急いで駆けつけると
管理人は制服を着た警官と話しているところだった。
『すみません…お電話頂きました若山です。』
管理人「お待ちしておりました。
実はですね……墓地の見回りをしていたら
怪しい人物を見かけまして……
このような悪戯をされていることに気付いたんです。」
両親の墓に目を向けると、
落書きによく使われるスプレーのようなもので
赤く塗りたくられ、黒のスプレーで[死]と書かれていた。
『これは……一体誰が…』
「防犯カメラに怪しい人物は写っていましたが
フードを被ってマスクをしていたので…捕まえるのには時間がかかるかと…」
フードとマスク……
コナンくんから聞いていた風見さんを撃った人物像と同じだ…。
警官の人から説明を聞いている最中、
私は怒りでワナワナと震え、爪が食い込むほど手を強く握り締めていた。
「先程隣町の警官から連絡を貰ったのですが…
そこでも同様の被害が出ているようです。」
『!!まさかそれって……
〇〇霊園にある、前田さんって人のお墓ですか?』
「え……なぜそれを!?」
『…少し……心当たりがあるんです…。
すみませんが私は仕事に戻らないといけないので、
今日はこれで失礼します。』
管理人と警官に頭を下げて、私は墓地を後にした。
今回の悪戯ではっきりした…
犯人の狙いは…
間違いなく私だ…
激しい怒りに飲み込まれそうだったが
自分の車に乗り込んで一度深呼吸をした後、私はある人に電話をかけた。
「電話くれるなんて久しぶりだな。
何かあったのか?」
『……秀一くん…』
「美緒…?どうした?」
『お願い……助けて欲しいの…』