第58章 公安
side 降谷
美緒と最後に会った日から数週間が過ぎた。
あいつは今日長野に出張に行くと聞いたが…
もうしばらく会えない状況が続きそうだ。
それくらい今は公安で嫌な事件が立て続けに起きていて
かなりバタバタしている。
そんな時…
「ヒロと連絡が取れない?」
風「はい。定期連絡の日時を過ぎたので
こちらからも連絡してみたのですが…全く繋がりません。」
警視庁公安部の会議室で風見からの報告。
ヒロは時間に正確でキッチリしているし
今までそんなこと一度も無かったから明らかにおかしい。
風「最近公安の刑事が襲われると言う事件が頻繁に起きていますし…諸伏さんも何かあったのでしょうか…。」
考えたくはないがその線もある。
……でもヒロならきっと大丈夫だ。
簡単にやられたりはしないだろう。
「ヒロのことは僕も調べてみる。
それより、襲われた公安の刑事から話は聞けたか?」
風「いえ……かなりひどくやられたので
まだ意識が戻っていません。」
「そうか…。」
風「やはりあの男が…」
「ああ、間違いないだろうな。」
僕と風見が2人で話していると
風見のスマホが鳴り、どうやらメールが届いたようだった。
風「若山さんからメールです。
長野県警にいる諸伏さんの兄に偶然会われたようで…
弟である諸伏さんと連絡が取れないから心配しています、
何か知りませんか?…とのことですが。」
あいつ……
また事件に巻き込まれたんじゃないだろうな。
「美緒には…ヒロは極秘の任務に出ていると伝えておけ。
公安の刑事が襲われた事件のことも
悟られないように何も話すな。いいな?」
風「承知しました。」
きっと美緒はこの事件のことを知ったら
自分も協力する!って言い出して無茶をしかねない。
それに…今回の事件の犯人は、恐らくあいつだ。
美緒を関わらせるわけにはいかない。
しばらくポアロのバイトも休んで公安の仕事をしているから
美緒に勘付かれる前に早く解決しなければ…。
先日美緒が送って来たウィッグをつけた彼女の写真をチラッと見てから再び捜査に戻った。
……そろそろ写真を見るだけでは我慢できなくなってきたな。