第57章 出張
『それで…私に話というのは?』
私がそう尋ねると諸伏警部の表情がガラッと変わり
少し鋭い目つきになっていた。
「景光とは…最近連絡をとりましたか?」
『いえ。連絡先知らないですし…
最後に会ったのは1ヶ月くらい前です。』
「そうですか…。」
詳しく話を聞いたところ
諸伏警部は、公安に配属になったことを諸伏くんから聞いたので
普段は連絡を取らず、時々手紙でやり取りしていたそうだ。
「毎年この時期には景光から必ず手紙が届くんです。
今年はそれが来なかった為少し心配で…。」
確かに諸伏くんの性格上、
毎年必ずやっていたことを突然やらなくなるなんて考えられない。
何かあったのかな……。
『公安に知り合いがいるので一度聞いてみます。
何か分かったら連絡しますね。』
「お願いします。これ、私の連絡先です。」
諸伏警部から名刺を受け取り挨拶をしてから
梢さんが待っている場所へと向かった。
帰りの新幹線の中…
風見さんにメールで諸伏くんのことを聞いてみたけど
極秘の任務に出ているので、詳しくは教えられないと言われてしまった。
でも…本当にそうなんだろうか…
…なんだろう……
なんか……胸騒ぎがする……
梢「美緒ちゃん、どうしたの?」
『あ………いえ!何でもないです!!
ちょっと長旅で疲れちゃったみたいで。』
梢「そう?もうすぐ東京に着くし
家に帰ったらちゃんと休むのよ?」
『はい、そうします!』
梢さんとは駅で別れ、自宅に帰った私は
零くんにも諸伏くんのことを知らないかメールしてみたけど
やはり風見さんと同じような内容で返ってきた。
私の考えすぎかな。
……でもやっぱり何か嫌な予感がする。
零くん…私に嘘ついていないよね…?
一度そう考え出すと思考は止まらなくて、
その日の夜はなかなか寝付けなくなってしまい
次の日は少し寝不足の状態で出勤する事になった。
それから数日経っても零くんとは会えないままで…
次に会えたのは私の嫌な予感が的中した時だった……