第54章 厚情
『零くんだって安室さんの時
ずーっとニコニコしてるじゃん。
可愛い女の子のファンもたくさんいるくせに!』
「安室 透は実在しない人物だからいいんだよ。
僕であって僕じゃない。でも美緒は違うだろ。」
まぁ確かにそうだけど……同一人物じゃないか!
「それに……
美緒以上に可愛い女なんていないから…
ファンがいてもいなくても関係ない。」
零くんの顔をパッと見るとほんのり頬が赤くなっていたので思わず笑みが溢れた。
『じゃあ…私も気をつけるから…
零くんも必要最低限しか愛想振り撒いちゃダメだからね?』
「…ヤキモチか?」
『うるさいな!』
「ははっ。」
2人でそんな会話をしていると、
地上に大きなボールが現れて何事かと思ったが
それはどうやら阿笠博士の発明品で
コナンくんが爆発を止めるために使用したものらしい。
道路にはわたしの首輪についていたものと同じような2種類の液体が流れていたが、1時間もすれば完全に中和できると、零くんが教えてくれた。
「コナンくんとあいつらはみんな一緒にいるはずだ。
そのうちここに来るだろう。」
『!!……そっ、か……。』
みんなが無事だった事は良かったけど
松田くんにはどんな顔をして会ったらいいか分からない…。
告白をされて…しかもキスまでされたなんて零くんに言ったら嫌われてしまうかもしれない…。
そう思い悩んでいると
零くんの掌が私の頭の上に優しく置かれた。
「美緒……松田と何かあったんだろ?」
『え……な、なんで…?』
「美緒の顔見れば分かる。
それに松田から話があるって言われてたからな。」
零くんはとても優しい顔で私を見てくれていたけど
本当のことを話したらそんな顔も二度と見れなくなる気がして怖くなってきた。
「美緒…例えどんなことがあっても
僕はお前を手放すつもりはない。だから正直に話してくれ。」
真っ直ぐに私の目を見つめながら話す零くんに
わたしはもう正直に話すことしか出来そうになかった。
『……ごめんなさい…わたし………
松田くんとキスしちゃった……。』