第49章 火事
『えっと…さっきの話の続きですけど…
実は零くんに教わったボクシングの技で倒したんです。
だからあの女を倒せたのは零くんのおかげなんですよ。
…ありがとね、零くん。』
「……別に…美緒の腕が元々良かったんだよ。」
窓の方を向いている零くんは
肘をつきながら口元を押さえていて、顔と耳がほんのり赤くなっていたから
きっと照れているんだと思う。
風「降谷さんもそんな顔するんですね。」
「うるさい…見なかったことにしろ。」
風「それはちょっと難しいですね。」
『ふふっ。』
私が笑っていると、零くんに頭を小突かれたけど
どうやら機嫌は治ったようで安心した。
そして私のアパートに着き、2人で部屋に入ると
お互い煙とか煤で汚れてたから、そのまま流れでまた一緒にお風呂に入ることになってしまった。
流石に今日は疲れてて抵抗する元気も無かったので、
ささっと2人でお風呂から出て、互いの手当てをし終えて休むことにした。
「美緒…今日はありがとな。
お前のお陰で僕は生き延びることができた。」
『零くんが死ぬには早過ぎるもん。
まだまだ日本の平和の為に働いてもらわないとね?』
「ははっ。そうだな。」
『それに……私と一緒に将来も過ごすって約束したのに
いなくなられたら困るよ。』
「……僕が手を出せないのを分かってて
わざと煽ってるのか?」
『っ!?違うよ!!
今日はお互い怪我してるからだめだからね!?』
「分かってるよ。だからあんまり可愛いこと言うな。」
…別に言ってない。
『…おやすみ、零くん。』
「おやすみ。」
私達は顔を見合わせて一度だけキスをしてからすぐに眠りについた。
本当に……零くんが生きてて良かった。
私は朝までずっと零くんに抱きついたまま眠っていて
きっとそれは彼が無事だった事を実感したくて無意識に彼の温もりを求めていたんだと思う。
…手出すのだめなんて言わなきゃ良かったかな…と
ほんの少しだけ後悔した。