第45章 治癒
『零くん!ただいまー!』
わたしが玄関の扉を勢いよく開けると
零くんが顔を出した。
「おかえり、美緒。」
零くんは私を笑顔で迎えてくれて
私はそのまま彼に抱きついた。
『…零くん。たくさん辛い思いさせてごめんね。』
「記憶を失ったのは美緒のせいじゃ無いだろ?
でも、もうあんな思いはしたくないな。」
そうだよね……
病院で最初に目が覚めた時、
零くんすごく悲しそうな顔してたし…
『私…今回のことで自分はまだまだ弱いなって反省したの…。
だから明日から精神も強くなれるようなトレーニングに励むね!!』
「お前は相変わらず自分にストイックだな……。」
だってもっと強くならなきゃ
零くんを守れないかもしれないじゃん。
そんなこと恥ずかしくて零くんには言えないけどね…
「それより美緒。早く僕を癒してくれないか?」
『っ!?え!?
…えっ…と……何からすれば…いいの?』
恐る恐る尋ねると
零くんは怪しい笑みを浮かべてわたしの手を取った。
「とりあえず、一緒に風呂入るぞ。
腕怪我してるから美緒が僕を洗ってくれ。」
『いきなりそれは難易度高いよ!』
「…癒してくれるんじゃなかったのか?」
……果たしてそれは本当に癒しになるのか疑問だ。
『っ、もう!分かったよ!
でもお風呂で変なことしないでね!?』
「変なことって何だよ。言ってみろ。」
『…〜っ!!
分かってるくせに!意地悪!!』
「ははっ。」
…久しぶりに見た零くんの笑顔。
安室さんの笑顔とはちょっと違う彼の本当の素顔を見て
記憶を取り戻せて、本当に良かったと思った。