第30章 遠出
『…っ……。
その…これから先って言うのは……
この前言ってた将来、って意味で合ってる…?』
「合ってる。正式な求婚はもう少し待ってて。
今は…予約だけさせて欲しい。」
零くんはショルダーバックから箱を取り出し、
蓋を開けて中身を見せてくれた。
『これ……。』
「指輪までの繋ぎな。」
箱の中身は、シルバーのチェーンにピンクサファイアをあしらったネックレスだった。
「それと…クリスマスの時の埋め合わせ
ずっとできてなかっただろ?かなり遅くなったけど
マフラーのお返しもしてなかったし…。
……受け取ってくれるか?」
『っ、当たり前じゃん…すごく嬉しい…!
私も零くんとずっと一緒にいたい…
例えどんな事があっても絶対零くんのそばを離れないからね!』
「……ありがとう。美緒…
愛してる。」
零くんのその言葉が嬉しくて涙が出た。
私が喜びながら泣いていると、
零くんは私の首にネックレスをつけてくれてよく似合ってると言ってくれた。
『このネックレス、すごく高かったんじゃない?』
「ばか。国家公務員の給料舐めるなよ。」
金額が気になったのは本当だが
それよりも零くんが私とずっと一緒にいたいと思ってくれていた事が、何よりも1番嬉しかった。
『ありがとう零くん!これ…大事にするね!
わたしもあなたを愛してるよ。』
笑顔でそう伝えると、零くんは少しの間私を抱きしめ
徐々に顔を近づけてきてキスをしようとしたが
その時…わたしのお腹が空腹による音を盛大に鳴らした。
『…ごめん、お腹空いちゃった。』
「前にもあったなこんな事…。いい雰囲気が台無しだ。」
2人で顔を見合わせて笑った後
私たちは甘いキスを交わした。
人目が少し気になったけど、だいぶ陽が落ちて暗くなってきたし
周りの人達も私たちと同じように
お互いの恋人しか眼中にないから、すぐに気にならなくなった。