第27章 見舞
「そんなに拗ねた顔をするな。美人が台無しですよ。」
そう言いながら頭を撫でてくる秀一くん。
わたしはその手を掴んで払い除けてやった。
「ふっ。随分嫌われてしまいましたね。」
『別に嫌ってません。警戒してるだけです。』
そう言って顔を横に向けていると
秀一くんは立ち上がりわたしの頭を掴んで少し引き寄せてから
耳元で囁いた。
『ちょっ……!?なに!?」
「美緒…
手首に土星のタトゥーが入った人物を見かけたら警戒しろ。
そして、どこで見たのかをすぐ教えてくれ。」
秀一くんはそれだけ言うと、パッとわたしから離れて
お大事に、と言いながら病室を出て行った。
『……一体なんなの?意味がわからない…。』
アグバロスという名前の組織に、
土星のタトゥー??
意味不明だったから
わたしはそれ以上考えるのをやめてベットに横になった。
入院中の夜はやることがないので
すっかり早寝の習慣がついてしまった私は
すぐに眠りつき、久しぶりに父さんと母さんの夢を見た。
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「美緒、ちょっとこっちに来てくれる?」
『んー?なに、父さん母さん。なんか用なの?』
「いいからっ!……はい、おしまい。」
『え…。なに、何したの。怖いんだけど。』
「あなたの瞳、すごく綺麗でしょ?
私に似て眼が大きくてキラキラしてるから
記念に写真撮っておいたの!」
『はぁ?なにそれ気持ち悪っ!!消してよ!』
「こら美緒!気持ち悪いとか言うな!
母さんに失礼だろ。」
『いやいや、どう考えても気持ち悪いでしょ。
それにそんな写真使い道ないじゃん!』
「……大丈夫っ!いつか絶対役に立つから!」
『意味がわからない。まぁいいや、私もう学校行くね。』
「「いってらっしゃーい!!」」
ーーーーーーーーーーー……。
昔の夢を見たせいで朝早く目が覚めた。
あれは確か…小学校6年生くらい?だったかな…。
変な写真を朝から撮られたせいで不機嫌になったのを思い出した。
ぼーっとしながら夢の事を考えていたが
それよりも夢の中で父さんと母さんに会えたことが嬉しくて
わたしは夢の中で2人にまた会いたくて目を瞑り眠りについたが
残念ながらもう夢には出てきてくれなかった。