第74章 残像
『えっと、お疲れなのは重々承知してますが
実は私も調べて欲しい事が…』
風「はぁ…、大友 隆の戸籍は今調べてる途中です。」
『!?』
…なんで言う前から分かったの!?
っていうか、なんでため息!?
風「その件もあの少年に頼まれました。
なのできっと、予想通りの結果が出ますよ。」
風見さんも、コナン君のことを
すごく頼りにしてて、信用もしてるんだ…
まぁ、そうじゃなきゃ
頼み事されても素直に言うこと聞くわけないか。
「あの少年は本当に人使いが荒いので
あなたも気をつけた方がいいです、では。」
…風見さんからの電話が切れて
なんとも言えない気持ちのままでいると
諸伏警部から声をかけられた。
「何か問題でもありましたか?」
『…いえ、大したことではないので。』
「そうですか…。
では私は、未宝岳に到着するまで少し仮眠を取ります。
犯人を逃さないためにも、体力を回復させたいので。」
『分かりました、到着する前に起こしますね。』
「ありがとうございます。」
諸伏警部は私にお礼を伝えると
すぐに目を閉じて、静かに眠り始めた。
寝顔を横からこっそり覗くと
顔のパーツが弟の諸伏くんに似ているところが多く
無意識に笑みが溢れた。
大和警部が亡くなったと聞いて
悲しみや苦しみ、怒りを抱えているはずなのに
諸伏警部は本当に冷静で…
仮眠を取って体を休ませるのも
最善を尽くす為に必要なことだから
感情を全て押し殺し、犯人逮捕の為に今出来ることをこなす諸伏警部は、尊敬に値する。
長野県警は、きっとこの人が必要不可欠で
たくさんの部下達に慕われているはず…
そう考えると、諸伏警部を救うことができて
本当に良かったと思えた。
『生きててくれて…ありがとうございます…』
眠っている諸伏警部の横顔を見つめながら
そう呟いた私は、視線をタクシーの窓の外に移動させ
景色を眺めながら、目的地に到着するのを待った。
…この時、諸伏警部が実は起きていて
私の言葉を聞いていたと分かるのは、事件が全て解決した後だった。