第74章 残像
黙って私の話を聞いていた諸伏警部は
弟と似てる、と言われたのが嬉しかったのか
フッと笑みを溢していた。
『…引き止めても、無駄なようですね。』
「申し訳ありません…、ご心配をおかけします」
『悪いと思うなら、私からの条件を呑んでください。』
本当は立つ事すらしてはいけないのに
病院を無理して抜け出すんだから
私の提示する条件を呑まなければ
私は諸伏警部を力ずくで止めるつもり。
彼は少しの沈黙後、
条件が気になるのか、渋い顔をしながら口を開いた。
「条件の内容を…伺います。」
『まず一つ目、
事件が解決したら、すぐに病院へ戻ってくること。
二つ目、怪我をそれ以上増やさないこと。
三つ目、病院へ戻って来たら
貴方が退院するまで、私が世話係をします。』
「3番目は褒美なのでは……」
『はい?褒美??』
「っ、いえ……なんでもありません。」
『??…まぁ、とにかく
三つの条件は守って下さい。いいですね?』
「承知しました…。」
圧をかけて条件に納得してもらったところで
私達は看護師や医師に見つからないよう
こっそりと病院を抜け出し
近くでタクシーを拾い、車内へ乗り込んだ。
『運転手さん、未宝岳方面に向かって下さい。』
「かしこまりました。」
県警ではなく、別の行き先を伝えた私を
諸伏警部は驚いた表情で見ていたので
タクシーが動き出してから、私は詳しい説明をするために口を開いた。
『まずは、諸伏警部の車を取りに行って
そのまま国立天文台野辺山に向かいます。
どうやら犯人の正体が分かったそうなので。』
「なるほど…、
私が眠っている間に謎が解けたのですね。」
『えぇ、天文台には皆も向かってるはずです。』
「分かりました。敢助くんも一緒ですよね?」
『…。』
…本当のことを言うべきなんだろうけど
今はまだその時じゃない。
ちょっと言いにくいけど
私は顔を俯かせながら、コナン君から送られて来たメールの内容を伝えることにした。