第73章 隻眼
諸伏警部に言われた事が胸に刺さり、
零くんの顔を思い浮かべたら
過去を思い返して暗い気持ちになっていたモヤモヤが晴れた気がした。
『ありがとうございます、
お陰で気持ちに余裕が出て来ました。』
「それは良かった。」
きっとこの人は諸伏くんと同じで
心から優しい人なんだろう。
…顔立ちも似てるし、性格まで似てるなんて
血の繋がりを感じる。
『やっぱり諸伏くんのお兄さんなだけありますね?』
高「…?それは、どういう意味なんでしょう?」
『ふふっ、なんでもないです!』
高「っ…」
諸伏兄弟の似たところを見れて嬉しく感じた私は
笑顔を諸伏警部に向けると、彼はなぜか息を詰まらせたような表情をしていて…
どうしてそんな顔をしているのか不思議に思った途端
私達に向けて、大和警部が声を張り上げていた。
大「おい高明!いつまで喋ってんだ!?
そろそろ県警に向かうぞ!!」
『あ…、少し長く話し過ぎましたね…。
戻りましょうか?』
高「…。えぇ、そうですね…。」
諸伏警部の返事を聞いた私は先に歩き出し
蘭ちゃんや子供達が待っている車に向かった。
高「初めてあなたの笑顔を見ましたが…
…長野県警の刑事達と、
金髪の彼が夢中になる理由がよく分かりました。」
…諸伏警部が呟いていたことは
勿論私の耳には届いていなかった。