第72章 多幸
諸「なぁ、翔。
パパとママからはプレゼント何もらったんだ?」
「パパとママからはもらってないよ!」
萩「え…なんで?欲しいモン無かったのか?」
『…実はね、
翔に今日までずっと欲しいもの聞いてたんだけど
いらない、の一点張りで…』
「やっぱり何も言わないままだったのか…」
『うん…保育園の先生にも聞いてもらったんだけど
プレゼントはいらないって言ってたらしいの。
理由聞いたら誕生日当日に話すとしか言わなくて…』
本当に欲しい物が思い浮かばなかったのかもしれないけど
5才の子供に
プレゼントはいらないってはっきり言われたから
私も零くんもとりあえず何も用意せずに
翔の好きなご飯をたくさん作っただけにしておいたんだ。
「翔、本当に欲しい物なかったのか?
誕生日なんだから我儘言ったっていいんだぞ?」
松「そうだぜ、翔。ゼロと美緒はお前の為なら
何でも買ってくれるし何処にでも連れて行くだろうよ。」
「……うん。」
『翔。遠慮せずに話してみて?
パパとママでできる事ならなんでもするから。』
零くんの足の上にちょこん、と座っている翔にそう伝えると
そのまま足の上から降りて床に座り直していた。
「ぼく…本当にプレゼントはいらないの。
でもね、パパにお願いしたいことがあるんだ!」
「いいよ。何でも言ってみろ。」
「ぼくね………もっと強くなりたいんだっ!
だからぼくのこと……鍛えてくれる!?」
「「「『えぇっ!?!?』」」」
き、鍛えるって……なんで!?
5才になったばかりの我が子は
想像を遥かに超えたお願いを零くんにしていて
その場にいた全員が驚いていた。