第1章 実験体
「何か御用でしょうか?」
「何もォ?なァーーんにもだ。なにも!!無さ過ぎてつまらーん!」
ぴゃっと手足を広げると重力などないようにゆっくりと空中で一回転をする。ケフカ様お気に入りの一品"天使の羽"のレビテト効果だろう。神経質にキッチリとひっつめられた髪留めに羽飾りが揺れる。
「だから僕ちんの暇をつぶせ!」
そう言われましても、と小首を傾げる。目の前で宙に寝転んだケフカ様も鏡写しのようにして首を傾げて見せた。面白がって変な顔をしてみたら、返された変顔に思わず吹き出してしまう。
「ふふ、あははっ!」
「失礼ですよぉ、他人の顔を笑うなんて」
そう言いはするけどこれはきっと怒ってない範中かな。ケフカ様が唐突に踵を返して跳ねるように歩き出す。この人の行動はいつも突然だ。
これで着いていかないと……、「早くするじょーっ!!!」
機嫌を損ねてしまう。扉の前でこちらを睨みイライラと足を鳴らしている。