第1章 実験体
意識が覚醒すると髪がゆらりと視界を遮った。いつも通り魔力槽の管で目覚める。睡眠の必要はないものの弱れば意識を失う。魔力を動力源とする私は、人がベッドで眠るように管で休んだ。
ふと、ガラス越しに見覚えのある魔力が漂う。この水に広がる血のように鮮やかな赤はケフカ様の魔力だろうか。そう思うと扉が横にスライドした。
「024は?」
「はっ、管に収容してから目覚めていません!」
生返事を返すと、立ち止まりもせず真っ直ぐ近づいて来る。視界の隅に先の尖った豪奢な靴が並ぶのが見えた、ガラスがコツコツと鳴る。
「起きなさぁい、朝ですよー?」
私にしてみれば意識を覚醒する魔力さえ整えば朝も夜も無い。……多分、ケフカ様が暇なのだろう。当然だ。まだ人間が起きる時間じゃない。