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カナリア色に愛を込めて

第2章 カナリア色に口づけを


大安吉日。
今日、私たちは夫婦の契りを交わした。

小規模ながら華やかに行われた結婚式は、その式次第を無事に終え、ようやく二人だけの時間を手にすることができた。

セミダブルのベッドに入り、私たちは今日一日のこと、例えば私のブーケトスが思ったよりも遠くに飛ばなかったことだとか、を思い返しながら顔を合わせて笑い合う。
寝る前に小一時間ほど会話を交わすのは、私たちが同棲を始めてからの習慣だった。確か、『一緒にいない時のこともきちんと知りたい』というのがきっかけだったはずだ。

この他愛ない会話は一日のうちで最も穏やかで心休まる時間だが、今日は少し違う。
なぜなら私たちは夫婦となり、そして今日はその契りを結んだ初めての夜だから。

おもむろに、お互いの視線を混じり合わせる。
フレンの瞳はいつも通り、穏やかな夜の海のように濁りなく、そして美しく澄み切っているが、その奥にはちらちらと情欲の炎が見え隠れするように見えた。

『怖い』

初めてそう感じた。

視線も、触れ合った場所から伝わる体温も、すべてが暖かく、心地の良いものなのに、何故か目の前にいるフレンが得体の知れないモノのように感じられる。

「…僕が、怖いかい?」
そんな私の心情を汲み取ったと思われるフレンは、少し困ったような表情で笑うと大きな手のひらで私の頬を優しく撫でた。

「すまない。君を怖がらせるつもりはないんだ。ただ…僕も男だから、その、少し、動揺を隠しきれないんだ」
彼は伏し目がちにこちらを伺い見ながら更に言葉を重ねる。

「今夜はソファで寝るから、ゆっくりお休み」
私の頬に自らの唇を優しく当てがうと、彼はゆらりと起き上がり革張りのソファへ歩を進めようとする。
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