第9章 SOS
涙でボヤける視界の先に立っていたのは、
國神さんだった。
その姿はまるで正義のヒーローのように見え、もう大丈夫なんだ、助かった…と多大な安心感を私に与えてくれた。
「ーーーーなっ、、何やってんだよっ‼︎‼︎」
室内の光景を目にした國神さんは目を剥き額に筋を立てて叫んだ。
そしてあっという間に私の口を押さえていた男の胸ぐらを掴み上げると、拳を振り上げ殴り飛ばした。
ドゴッッ
「ゔぉえっ、、、」
男は勢いよく吹っ飛び、ロッカーに身体を打ちつけぐったりする。
國神さんの怒りに満ちた目がもう1人を捉えると、男は後退りをしながら首を横に振った。
「お、、俺はやめろって言ったんだ、、、
アイツが途中から暴走して、、っ‼︎‼︎」
ボコッッ
殴られた男は床に転がり、怯えた表情で國神さんを見上げている。
「ーーーお前らはこんな事しにここに来たのか?」
いつもの穏やかな声とは違う、低くて凄みのある声に、背筋がゾクリとした。
國神さん、、、キレてる、、、、
普段の優しい面影はそこには……無い。
『く、、國神さ、、、もう、、』
"やめて"と言うより先、國神さんは男に跨ると、拳を振りあげた。
見ていられず、ぎゅっと目を閉じると、
「ーー國神、もういい。が怯えてる。」
場に似つかわしく無い、落ち着いた声が聞こえた。
この声、、、
薄く目を開けると、千切さんが入り口に立っていた。
『・・・・千切、、さん、、』
千切さんと目が合い、その綺麗な瞳が悲しげに揺れたのを最後に、、、
私は意識を手放した。