第8章 恋慕1 恋の暴走【家康】R18
とうとう家康はかける言葉が見つからないまま、名無しの部屋についた。
無言で名無しは部屋に入り襖を閉める。
襖にもたれたまま立ち尽くしていた。
しばらく足音はしない。
まだ家康は襖の向こうにいる。
名無しは息をひそめた。
「…俺は、後悔はしていない…」
きっぱり言ったその言葉のあと足音が遠ざかっていった。
名無しは糸が切れたように、ぺたんと座り込んだ。
まだ家康の感触が
唇にも身体に残っている。
男らしく獰猛で燃えるような瞳と、切なく悲しそうな瞳。
相反する瞳の輝きを思い出すと胸の奥がざわめく。
「どうしたらいいの…」
名無しは両手で自分の体を抱きしめながら呟いた。