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最果ての夢【NARUTO短編集】

第5章 愛の月読【うちはイタチ中編】



万華鏡写輪眼

「月読…」

ナナミが棒立ちになった。

イタチは、自らの幻術へ思念を集中させる。

時間と空間と質量の一切を支配することが出来る幻術”月読”。

シスイの死の代わりにイタチが得た力だった。

この幻術の中ですぎる時間は、現実世界の何百何千何万分の一である。

イタチは明確にイメージを描く。

木の葉隠れの里の平和、一族の平穏を。

一切の苦悩から解き放たれた自分の姿。

そして…。

隣で笑うナナミ。
こんな自分を大好きだと言ってくれるナナミ。


自分を追うようにしてナナミが中忍になった。

その頃にはすでにイタチは上忍となっている。

恥ずかしがるナナミに結婚指輪を渡す。

忍を引退するナナミ。

結婚。

出産。

育児。

子供の旅立ち。


イタチと共に老いてゆくナナミ。

出会ってから七十年。

二人の髪は真っ白だ。

ナナミの病。

病床。

看病する。

余命…。

チャクラを膨大に消費する万華鏡写輪眼は、術者に相当の負担を与える。深い水底から這いでたように、イタチは肩で大きく息を吸った。その目の前で、ナナミが微笑みながら膝から崩れる。


イタチは滑り込むようにして彼女の身体を支え、細い肩をしっかりと掴んだ。

「ありがとう」

微笑みかけるナナミの声は、まるで八十を超えた老婆のようだった。

「俺のほうこそ…」

肩をつかむ手に力がこもる。それ以上声にならない。



満面の笑みを浮かべたナナミが、そのまま穏やかに息を引き取った。

精神と肉体は不可分である。

心が朽ちれば肉体も潰える。

ナナミは幸福に包まれて死んだのだ。


動かなくなったナナミを優しく床に寝かせると、イタチはふらつきながらなんとか立ち上がった。チャクラの激しい消耗が、身体を震えさせる。


最初はナナミだと心に決めていた。

彼女を手にかけることで、最後の迷いを振り切る。

一族に対する未練ではない、情の繋がりという迷いだ。






「俺を信じてくれてありがとう…」




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