第1章 ラビ①〜黒の教団での私達〜
ブックマンはラビにきつめの視線を向けた。ラビはしばらくぎこちなく口をもごもごと動かし考える素振りを見せた。その後、大きく肩をおろした。
感情の制御が全くきいてない。
今回は兵士としていて黒の教団に身を寄せて記録している。外部から戦況を観察するのではなく、内部で片方の組織に入り込んむ仕事はラビにとってはじめてだった。一瞬の不注意が本業にとって大きな支障につながる。一度後継者を失ったことのある高齢のブックマンにとってラビまでも失うわけにはいかない。
白いの煙をふっ――と長く長く吐くと手に持っていた煙草の先をゴリゴリ灰皿にこすりつけて火を消した。その手で治療用の針を手にしてラビのベッドに移動した。
「今は休め。横になるんじゃ」
ラビはむすっと「いらねぇよ」など文句を言いつつものそのそとその大きな身体を横にした。
ブックマンはラビの手を握った。出会った時、ラビの手は柔らかく自分の手ひらにおさまるサイズだった。それが今では厚みがありがっちりして逆にブックマンの手のほうが小さくなっている。
ブックマンが治療を開始してほとんど時がたたずラビの寝息が聞こえてきた。よほど疲れていたのだろう。心も身体も休むことが1番の回復につながる。
治療を終えて道具を片付けると再びベッドに戻った。
(別ルートから先に情報を仕入れるかのぅ)
まだまだ危うい後継者がいる中この老体がいつまで保つのか胸が重くなる。
流れる動作でマッチに火をつけて再び煙草に火を灯し口に加える。
呼吸をするたびに煙草から身体に染み渡る快楽に沈み込み暗い気持ちを切り替えたのだった。