第2章 地下交易港
弱さとは罪だ。
この大海賊時代においては特にそう言える。
無力な正義ほど虚しいものはないだろう。大層な思想を掲げるならば、それに見合った力が必要だ。
暴力、権力、財力のいずれかでも無いとこの世界では何も成し遂げられはしない。
何も持っていない者が何をしようとも、ただ現実を思い知らされ蹂躙されていくだけに過ぎない。
私だってそうだ。
何もできなかった。仇を討ちたかった相手に会うことすらできないまま打ち負かされ自由を奪われてしまった。
毎日毎日、布と綿でできた身体を捩りながら労働させられている。
苦痛を味わいながら出来ることといえば、己の無謀さへの後悔とかつて楽しかった頃の記憶を反芻することくらいだ。
これからどうするかなんて考えるだけ無駄だ。玩具にされ自分の意思では動かないこの体では置かれた状況から逃げられない。
四肢が壊れてしまい使い物にならなくなったとき、ようやく死という形で労働に終わりが来るだろう。
救いはない。
いつか誰かがこの地獄をめちゃくちゃにして私たちを救い出してくれる日を夢見ても、結局のところ絶望し直すだけだった。
ずっとずっと、奴隷のように過ごしてもう8年も経つ。
友を殺した仇はまだ平然とこの国の頂点にのさばっている。
誰でもいいから助けてくれ。誰でもいいから倒してくれ。
私は無力だ。自力では何もできない。
来るかもわからない報われる日をじっと耐えて待つしかない。
黄泉の国の友よ、愚かな私をどうか見ないでくれ。
情けなくて死にたくなってしまうから。