第1章 ~色が生まれる世界~
爪が治るまでは部活はお休みになった。
気温が上がり始めてるせいか傷の治りが少し遅く感じる
完全に爪が治るまではベースを触るのも禁止にされ
少し退屈な生活を送っている
確かにマニキュアを落とす時は少し痛かった。
「ということで!アヤちゃんには罰として私のお手伝いをしてもらいます!」
「…えー…」
どうやら今日は僕はヒナのパシリにされるようだ
大きなカバンを抱えて第二体育館に続く廊下を歩く
「あれ、木江さん今日が差し入れの日だったっけ?」
後ろから女性の声がする。体に自然と力が入ってしまう
おそらく三年の先輩だろう
ヒナは大きなカバンを見せつけるように突き出して笑っている
「はい!今日ですよ!清水先輩!邪魔じゃなければ今から行こうと思うんですけど…」
「大丈夫。これから休憩に入る時間だと思うから、東峰も喜ぶと思うよ」
ヒナが珍しく赤面している。
ヒナの想い人がいるから足蹴く通っているのは本人から聞いてるからよく知っている
ちらっと見たことはあるが…大きい人だった
「ヒナ、そろそろじゃない?」
「あ、ほんとだ!失礼します!」
本人はばれてないと思っているらしいがたぶん、さっきの先輩にもヒナの想い人はばれていると思う
そういう意味では分かりやすい
いや、わかりやすいと最近知った
第二体育館の重々しい扉を開けるとバレー部の面々はタイミングよく休憩に入ってたみたいで数名がこちらを見ていた
見回すとヒナの想い人もいるみたいだ
「木江さん、いつも差し入れありがとうございます!」
「あはは!武田先生もいつもお疲れ様です!あ、ちゃんと皆さんも分もありますので食べてください!」
ヒナは僕から離れて想い人のほうへ駆け寄る
好きな人ってどういう感覚なのか僕にはまだわからな
「軽音部の人だよね?木江さんの差し入れほんと助かってるよー!あ、俺は三年菅原!よろしくね!」
多分、僕が隅っこにいたからだと思うし、僕のことをヒナから聞いてたんだと思うけど
それでもわざわざ話しかけてくるのは、心臓が飛び出そうなほど驚いた。
いや。これは
驚いたのか…?
笑いかけてくれた彼の声に、姿に
僕の世界が色に満ちていく感じがした。
頬が自然と高揚していく。
色が生まれた。