第9章 夜の女(※)
夢主side
『家で教わったりしたよ、色んな言語とか勉強は大体。・・・今の自分に身についてるモノは全部そうやって学んだの』
今思えば何もかも普通ではなかった気がする。その時は他の子達の生きてる世界も人生も、よく知らなかった。
私の人生は、"ある人"によって作られてきたから。
「ソレ、親の方針?」
『・・・ううん。8歳の時くらいから両親には会ってないから、ほとんどのお世話は他の人に』
・・・あれ、なんか、重たい話になってない?そんな空気にしたくはないんだけども。
正直あまり話せることがない、人に言えるような何かがない。
「そ。・・・が中身ばっか子供な理由が分かった気がするわ」
『むしろ、こんな子供いないと思うけど』
そういうと春千夜は横になりながら肘を立てて、見下ろしてきた。
今日は少し冷たい彼の手の甲が私の顔を撫でる。
「大人になるまで遊んだ事なかったんだろ。子供心を満たされずに成長した大人はデカくなった時に満たそうとする。・・・オマエみたいだろ?」
春千夜の言葉が深く突き刺さった気がした。
普通じゃない事を普通だと思い込むしかない、そんな子供。そんな自分でも認められてチヤホヤされる今の仕事。
ただ彼の目を見つめていた。
何故か酷く優しい顔をしていたから。
「なァ、。反社のオレ達でもこの世の中楽しいコトくらい沢山あんだよ、オマエが知らねぇような場所もまだまだあんだろ」
笑いながら言う春千夜をみて、目頭が熱くなる。
ねぇ、私出逢って思ったの。春千夜と過ごす時間って初めての事ばかりで。知らない感情を沢山知ったよ。
「もっとやりてぇ事しようぜ、オレが付き合ってやるから」
色んなモノが綺麗で眩しい。
なんだか彼がヒーローみたいだ。おかしいね、お互いに人殺しなのに。
そんなのわかってる、でも
目の前にいる春千夜の言葉が、全てが、いつも私を動かしてくれるんだ。
この人なら救ってくれるんじゃないかって。
私ね、貴方のことが愛しくて愛しくて、堪らないの。