第10章 キラキラ星
「君さ、僕に嘘を吐いたよね」
『え?』
「面接の日。覚えてないの?」
“ 君さぁ…アイドルって、好き? ”
“ 嫌いです ”
私と彼が面接で交わした言葉は、たったこれだけなのだ。忘れる方が難しい。
回想を終えると、私はどう説明したものかと文章を組み立てる。
『あの時は、咄嗟にその言葉が出たんです。でも、ようやく落ち着いた今となっては…たしかにあの答えは、偽りだったと思えます』
「舌をちょん切るのは許してあげる」
『助かります』
「…僕は、その答えが嘘だと分かって君を採用した」
『え?』
「君が、まだアイドルに未練があることを知ってたんだ」
了は、何を言っているのだろう。もしかして…。心臓のドクドクという嫌な高鳴りを聞いていると、了は静かに話を続けた。
つまらない、思い出話をしようか。まずはそう口にして。
「焦がれたアイドルがいた。でもそのアイドルは、たった1日で僕の前から姿を消したんだ」
私は堪らず、ガバ!っと体を起こした。了は無表情の顔をこちらに向け、見えてるよ。と淡々と告げる。
いや、今は私の乳などどうでも良い。寝転がったままの了に、勢いよく迫る。
「あーごめんねー、今日は流石に、もう出来ない」
『誰がもう1ラウンドと言ったんですか!そうじゃなくて!あの…、もしかして、ですけど…』
「君って、自分のことになると本当に鈍いよね。そんな君にも分かるように、はっきりくっきり分かるように言ってあげる。
そうだよ。僕は、君が元アイドルだと知ってた。
それだけじゃない。君が眩しく輝いた、あの奇跡みたいな一夜。僕も、君と同じ空間にいたんだ」