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キラキラ星

第10章 キラキラ星




— キラキラ星 —


薄く覚醒した意識。ゆっくりと瞼を持ち上げるも、部屋にまだ朝の光は差し込んでいなかった。そして、隣には人の気配がある。
おそらく、さっきのアレからまだ時間はそう経っていないはずだ。しかし私は喉に痛みを覚え、それはどうしようもなく水分を求めた。仕方なくキッチンへと向かう為、出来るだけ静かに体を起こした。


「どこ行くの」


了の腕が、私の腕をしっかりと捉えた。


「永遠、僕の傍にいるって言ったくせに」

『お風呂とトイレと、あと台所へ水を取りに行く際はご容赦願えませんか』

「駄目」


駄目。そう告げたというのに、了は私の腕を手放した。そして、寝返りを打ち背中をこちらに向けた。まるで、拗ねた子供のようである。


「なんて、冗談だよ。
分かってる。永遠なんてものは、この世に存在しないことなんて。お前もどうせ、いつか僕の前から消えるつもりなんだろう?
永遠なんて…所詮は泡沫さ。お伽話と同じ。ただの夢みたいなものだ」


水なんてもう、どうでも良かった。たとえ喉が枯れ果てようと、今は彼の側から一秒たりとも離れたくない。そんなふうに思ってしまうのだから、これはもう完全に末期だ。


「あ、水ならそこにあるから。ほら。テーブルの上だ」

『…副社長が、置いておいてくれたんですか?』

「さぁね。でも良かったじゃないか。片時も、僕から離れずに済んだんだから」

『はい』

「即答するんだ。恥ずかしい奴だなぁ。また首を絞めたくなってきたよ」


水に手を伸ばし、キャップを捻りながら背中で答える。


『良いですよ。いくらでも。もし、貴方が誰かをこれでもかと傷付けたくなったとき。その時は、他の誰でもなくこの私を使ってくださいね。八つ当たりでも、言葉攻めでも、陰湿な嫌がらせでも、貴方がするなら、それは全部 私のものです』

「変態」


その言い草に、ついつい鼻を鳴らしてしまう。それから、ようやく水にありついたのだった。そんな私に、彼もまた背中で話す。


「嘘だよ。さっきは、カッとなって…あんなことしたけど。もう、しないよ。二度とね」


ごめん。

彼の、心からの謝罪の言葉。私は、この時 初めて耳にしたのだ。

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