第44章 うちの上司は
降谷さんはムッとして、私の両頬を挟むように掴んできた。
コツンとおでことおでこを合わせ、見つめ合う。
「…めぐみ。」
「降谷さん。」
「めぐみ、太ったか?」
私の両頬をむにっと触れる降谷さんに、私は慌てて手を振り払った。
ーー…キスするのかと思ったのに!!
「実家にいる間、トレーニングしてませんでしたから!」
「手を抜くな。」
「…警察辞めたと思ったんです!触らないでくださいよっ!」
「トレーニング始めたらまた身体絞られるのか。よし、その前に堪能しておきたいな。」
「ちょっ…!」
腰に手を回し、抱き寄せずるずると車に向かっていく降谷さんの手をどかそうと必死にもがいたが、この上司の力に適うはずもない。
「ふ、降谷さんっ!本庁戻るんでしょ!?」
「あぁ。如月のことに、喫茶店も任せたままだし、九条の後片付けに、書類も溜まってるし、めぐみのことをしてたせいで、山積みだ。」
引きずられながら、私は力を抜いた。
「…すみません。お手数おかけしました。」
私のせいで降谷さんの仕事が増えてる。
「向こうに帰ったら、寝る暇はないと思え。」
「はーーい。」
「書類はやっぱりめぐみのやつがいい。」
評価されていると、やはり嬉しい。
「死ぬ気で頑張ります。」
「あぁ。」
降谷さんの白い車に到着し、私は助手席に乗り込むと、シートベルトをする間もなく肩を掴まれ引き寄せられた。
「…んっ。」
触れるだけのキス。
急にされるとは思わなくて、私は反応することもできず、微笑む降谷さんを見つめた。
「つい。」
いつぞやのセリフを笑いながら言う降谷さん。
「…降谷さんって言葉で言わないけど、私のことすんごい好きですよね?」
きっとうちの上司はまた照れてはぐらかすに決まってる。
『自惚れるな。』とか言って仕事の話をし始めるんだ。
からかうように私が言うと、降谷さんは私の頭をぽんっと叩いた。
「あぁ。そうだな。」