第44章 うちの上司は
後ろに下がろうとした降谷さんの両手首を強く掴み離さなかった。
「そんなので、結婚なんて出来ると思わないでください。」
「……。」
言葉でしか得られないものだってある。
降谷さんがこうやって、わざわざ来て来てくれたのだから、私のことを少なからず大切にしてくれてるんだとは自分でもわかってる…。
だけど、うやむやのままにはしたくない。
私は何度だって伝える。
自分の気持ちを。
だって、何があるかわからない仕事をしているんだものーー…。
私の真剣な目に降谷さんは観念したのか、力を抜き、大きなため息をついた。
「ただの優秀な部下だとしか始めは思ってなかった。」
「…。」
「だが、高橋や影月がめぐみのそばにいると、何故か腹が立っていた。」
私が降谷さんから手を離すと、今度は降谷さんが私の両手を取った。優しく触れてくる降谷さんの大きな手。
「めぐみが潜入をする時だって、今まで何度も部下を見てきたが、こんなに心配したのも、気になったのもめぐみだけだった。」
私は語られる降谷さんの言葉を黙って聞いた。
「疲れて本庁に帰った時、資料片手に迎えてくれるめぐみがいると頑張れた。」
そんな風に思ってくれてなんて知らなくて、心の奥が熱くなった。
「いつのまにか部下ではなく、一人の女性としてめぐみをそばに置きたいと思うようになった。」
「…降谷さん。」
降谷さんは右手を私の手から離し、そっと私の前髪を払うように撫でた。
「ハロが苦手で、嫌な顔しながら遊ぶめぐみを見るのが好きだった。」
「ふふっ。」
今はもうそんなに嫌な顔しない…はずだ。