第44章 うちの上司は
スーツに着替えた私は降谷さんの待つ部屋に急いだ。
「お待たせしました!」
「遅い。」
私が来た瞬間、睨みつけすぐに立ち上がる降谷さん。
「…すみません。」
「家のことは終わったのか。」
「はい。とりあえずは…。弟がよくしてくれて、あとのことは後日していくことにしました。」
裏口から出て行くようで、縁側で靴を履くと先程の庭の近くまでやってきた。
「そうか。」
「ありがとうございました。降谷さんたちみんなが来てくれなかったらどうなってたことか…。」
考えただけでもぞっとする。
「いや…最初に巻き込んだのは僕のほうだ。」
「…?」
降谷さんは途中で足を止め私の方に振り返った。
「警視庁の九条は、自分の部下をゼロにしたいがために、めぐみに声をかけたんだ。」
「…え。でも、私を辞めさせることに意味が?」
「恋人を攻め、周りから少しずつ僕を精神的に追い詰めたかったんだろう。しかし、それも阻止した。九条は警察庁に行ったからな。」
降谷さんも私が警察をやめて、別れることを了承したものと思っていたけれど、そんなことなかったんだ…。
「降谷さんからも、誰からも何も言われなくてーー…。風見班のみんな、上の命令を聞いて連絡を絶っているんだろうって思ってました…。」
私なんていなくても大丈夫だと、言われてるようだった。
「バカ。めぐみの携帯はここだ。」
「……へ?」
目の前にあるのは私と同型のスマホだった。
自分はここに持ってるはずだと、私はポケットからスマホを取り出した。
「そっちは警察関係者の連絡先をすべてに書き換えられた偽物だ。」
「……。」
「まったくそれにも気づかないなんて、それでよく公安が務まるな。」
微笑む降谷さんはぐしゃっと乱すように私の頭を撫でた。