第42章 元上司 降谷零の謀略
インカムで影月に案内されながら、僕たちは旅館の裏手の方までやって来た。
「あそこが半崩壊って言われてる場所っすかね。」
客からは見えないようにされてはあるが、廊下から先が大きくえぐられるように壁が壊されていた。
一応ブルーシートなどで覆われてはいるが、あのままというわけにも行かないだろう。
「だろうな。」
「勝手に壊すだけ壊して消えるとか最悪っすね。」
工事費を取り、壊すだけで消えた架空の会社。
それを使った如月建設。
「あ、降谷さん。あそこ。」
高橋の視線の先に袴姿の男。
「ーー…如月奏。」
「…飛びかからんでくださいね。」
「そんなことするわけないだろ。」
高橋に言われ、鼻で笑った。
この状況で容疑者に接触なんてするはずがない。
そんな浅はかなことーー…
「ふ、降谷さんっ。」
高橋に肩を掴まれたが、それを静かに振り払い僕は真っ直ぐと如月に向かって足を進めていた。
めぐみにキスを迫ろうとするのを見てしまったからだ。
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「ほ、ホント何してんすか!降谷さん!」
「……バレてない。」
影月にインカムで電圧計の場所を咄嗟に案内され、適当に高圧ケーブルのことを如月と話した後、高橋の元に戻ると自分のしたことに自分でも驚いた。
「めぐみにも接触して…!」
「…だからバレてない。」
黒髪だったし、顔を見られるヘマもしてない。
「影月に道案内されたからよかったものの…。」
「…問題ない。」
「降谷さんって意外とーー…。」
「なんだ。」
ため息をつく高橋をギロリと睨みつけた。
「情熱的なんすね。めっちゃめぐみのこと好きじゃないですか。」
「…うるさいっ。」
「いやぁ、いいもん見れた。」
「馬鹿なこと言ってないで、侵入経路と建物の把握だけしてさっさと帰るぞ。」
「はーい。」
如月奏の顔と声は把握した。
さっきキスを迫られていためぐみの腕を咄嗟に掴んだ。
久しぶりに触れためぐみの温もりを思い出しながら、自分の手のひらを見つめた。