第41章 プロポーズ
庭園の見える一部屋。
今日は一角を貸し切っていた。
清々しい午前中の優しい風が吹いていて、あぁ、今日ここで結納をするんだ。と、なんとなく他人事のような感じがしていた。
元々警察にすっごく憧れてなったわけではない。
別に強制されたわけでもないが、両親の仕事をついで女将になることがなんとなく決まっているのが嫌で、
東京の大学にすすんで、一人暮らしして、公務員にでもなっとけば“家に帰って来い”って言われないだろうって警察官に応募した。
だけど実際に働いてみたら、毎日が充実して、誰かを助けたり、誰かに感謝されたり、悪い人を捕まえたり、良い先輩に出会ったり、彼氏ができたり…
ーー…怖い上司の直属になったり。
怖くて、無茶苦茶で、体が三つくらいきっとある私の上司。
真っ直ぐで、たまに優しい目をする私の元上司。
「さよなら…降谷さん。」
「ん?何か言った?」
ついポツリと呟いてしまっていたらしい。
私は慌てて首を振った。
私はもう警察をやめたんだ。
ポアロで安室さんを見かけることはあっても、ゼロである降谷さんに会うことはもうない。
目頭が熱くなりそうなのをぐっと抑え込み、我慢していると奥から足音が聞こえて来た。
きっと如月さんとそのご両親だろう。
不躾に見ることないよう、1番の下座に正座したまま私は目を伏せ、自分の膝を見つめた。
父は障子の向こう側にいる人物に“どうぞ”と声をかけた。
障子が開けられ、私たちを挟んだ机の向こう側に座ったので、私は顔を上げた。
「……え?」
私は口を開け、目の前の人物を見つめた。
「…君は?」
「あの……。」
父も母も訳がわからない様子だ。
入って来た人物は用意された座布団には座らず畳に直接正座をして父に話しかけた。
「私は警視庁に所属している、降谷零といいます。」
「…警視庁……?」
「娘さん…めぐみさんと結婚させていただきたくご挨拶に伺いました。」