第28章 ヒミツの関係
ごませんべいの何が悪い。
噛めば噛むほど味が出て美味いんだぞ。
私は机から自分の分のせんべいを取り出し口に放り込んだ。
実家が老舗旅館ってこともあって、料理は和食が多いし、習い事だってお琴や茶道とかだった。
ごませんべいだって、おばあちゃんがよく囲炉裏に網を置いて小さい時に焼いてもらって教わった。
「…ババくさい。」
「別にバカにしてるわけじゃないわ。あなたらしくていいんじゃない?」
「バカにしてるじゃないですか。いいんです。これは私の取り柄です。」
「そう。」
本当にバカにはしていないだろうが、ローラさんに言われるとなんだかそう聞こえてしまうのだ。
そう思いながら私はもう一枚ごませんべいにぽりっと齧り付いた。
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風見さんの案件をまとめ、次の捜査会議で使えるように資料を作っている時だった。
意外と時間がかかり、もうすぐ夜だが、まだ出来そうにない。
「夏目。」
黒い服にいつの間にか着替えている降谷さんが、執務室の扉の前で私を呼んだので、私はすぐ立ち上がり彼の元に向かった。
そして、執務室のよこの小さな会議室に2人で入った。
「今から例の組織ですか?」
「あぁ。怪我でしばらく向こうにも顔を出してなかったからな。」
あの怪我からまだ1週間とちょっと。
本来ならまだそんなに激しく動かない方がいいんだろうが、組織にとっては知ったことではない。
「悪いが、そのままハロを2日ほど頼めるか。」
「わかりました。」
「風見の案件もまだ気になることがある。捜査会議の内容をさらにわかりやすくまとめて僕に報告してくれ。」
「はい。」
本当に忙しい人だ…。
無理するな。休める時に休め。
なんて、私が言ったところで聞かないだろう。
ーー…また数日会えないのか。
「じゃあ、頼んだぞ。」
「はい。……降谷さん。」
私は黒い服に包まれた上司の腕を引き頬に自分の唇を押し付けた。
「……帰ってきたら…今度こそ。もう誰にも邪魔されず…。」
「めぐみ。」
ふっと笑って降谷さんは私の唇にそっとキスを落とすと、会議室から出ていった。