第1章 序章
私はどちらかと言うと警視庁内で調べ物をする事が多い。
記憶力もまぁまぁいい方だと思ってる。
それを買われて今私は警視庁公安部にいる。
「夏目。この前のリスト作ったんだが、見てくれないか?ちょっと重要なやつなんだ。」
「はい。」
先輩に言われ私は座ったまま資料を受け取った。
「先日の違法入国者を斡旋している組織のやつなんだが。」
「あ、それでしたら。この人とこの人が専門学校で同級生だったようですよ。それを踏まえて作り直しますね。」
「お願いしていいか?」
「データ送ってください。…たしか、この人の他にも、他の詐欺事件でこの学校の同級生で先日逮捕されてたような…。」
「他の課のやつまでよく覚えてるな。」
「全部じゃないですよー。なんとなく覚えてて…。」
タタンっとパソコンを見つめながら、私は眉を寄せた。
「じゃあ、お昼まで作って先輩のパソコン送っときますねー。」
「あぁ、頼んだ。」
私はあまり外に出ると言うより、公安が動いている事件の資料を作ったり事務の人には頼めないようなことを中心に動いてる。
自分の得意なことではあるから別に嫌ではないのだけれど、出来れば私も現場に行きたいとは思ってる。
ギッ
椅子の背もたれに体重を乗せ、私は背伸びをした。
「おぅ、お疲れ。」
「髙橋。お疲れ様。」
「高橋さんだろ?」
「同期じゃん。」
背伸びのまま上を向いて横に立つ男を見上げると、おでこに甘いカフェオレの缶を置かれた。
この男は私の警察学校からの同期。
学校での班は違ったけれど、ずっと同じ警視庁に勤めていて私より一年早く公安部に配属になった男だ。
「でも先輩。」
「でも同期。」
カフェオレを受け取り、私はべっと高橋に舌を出した。
「ちょーしにのんな。」
「はいはい。それよりさ。この前の…」
「あー、あれね。はいどうぞ。」
私は鍵付きの引き出しからUSBを取り出し高橋に差し出した。
「さんきゅー。助かるー!めぐみのリスト本当にわかりやすいんだよ。」
「駅前の新しいラーメン屋ね。」
「いくらでも奢る。」
手のひらにくるくるとUSBをやり、高橋は嬉しそうにそれを内ポケットにしまった。