第20章 初めての
遠くで聞こえてくるエンジン音。
よく知ってる音だ。
「悪いが、彼に会うつもりはない。ここで俺は行く。」
「…はい。」
黒井さんはそういうと、再び夜の闇の中へと消えていった。
お礼も謝罪もあまり出来なかった……。
すると、すぐに私の前に停められた白い車。
「夏目っ。」
「……ぁ…」
「とりあえず、ここから離れる。乗れ。」
私は立ちあがろうと地面に手をついたが、震えて思うように立てず、再び膝をついてしまった。
「…薬を盛られたのか。」
「…申し訳…ありませ…」
降谷さんは私の横に立ち、肩に手を回してくれた。
途端いつもの降谷さんの匂いがして、私は降谷さんの腕を掴んでしまった。
「…っ…ふっ…」
背中がゾクゾクする。
「…めぐみ?」
「…ひゃ…っ」
降谷さんの声にすら反応してしまう自分が恥ずかしい。
「誰に飲まされた。」
何の薬かすぐにわかったのだろう。
私は降谷さんの腕に縋り付いたまま、ポツリと呟いた。
「店員に…好意を持たれているのは…気付いてたんですが…、控え室に潜り込み、私の飲み物に入れたようです…すみま…せん…帰る直前に飲んだので…すぐ…店から出てきました……」
「…そうか。悪い。少し耐えろ。」
「…ひゃっ!」
ぐっと抱き上げられ、横抱きにされると助手席に座らされた。
降谷さんが触れてくる全てが刺激でしかなかった。
私は靴を脱ぎ捨て助手席で丸まるように座った。
「ふー…ふぅーー…」
「…水だ。とりあえず飲め。」
「…はぃ…」
運転席に戻った降谷さんは新しいペットボトルを開けて私に渡してくれたのを、受け取ったが口に含むのも大変だった。
コクリとひと口飲んで、口元を押さえた。
溢れてしまいそうだった。
「…つらそうだな。」
「へー…きです。じょぅ…ほうは…ちゃんと……」
「いい。後で聞くからじっとしてろ。」
「…んっ……っ…」
揺れる車に耐えながら、自宅に着くのを必死に待った。
朝までーー…この状態なのだろうか。
早く1人になりたい…
早く…ラクに…なりたい。