第19章 ねぇ
駅の方へゆっくり歩きながら私は沖矢さんを見上げた。
「週末は変装をしてくるということですか?」
「そうだ。沖矢昴のことも変装のことも話されては困るんだ。」
私が降谷さんに黙ってさえいれば、私も上手く潜入できるし、彼と協力すれば情報もうまく聞けるだろう。
ーー…黙ってさえいれば。
「彼を…裏切るようなことは……」
したくない。
「違う。彼が組織に潜入している。俺はその組織に死んだと思わせてるんだ。これは俺の命を守るため、彼を裏切るわけじゃない。」
「貴方は…降谷さんの敵ではない?」
「FBIだからな。出来れば手を組みたいとさえ思っている。」
私は足を止め、考えた。
「わかりました。今回は貴方のことは降谷さんには黙っておきます。しかし、今回だけです。貴方のためではなく今回の潜入を成功させるためだけ。」
彼の目をじっと見上げると、沖矢さんは笑顔で頷いた。
「いいだろう。週末はいい演奏をしよう。これは連絡先だ。曲のリストを後で送る。降谷くんにはバラすなよ。」
「わかりました。」
彼の番号を登録すると、その紙をすぐに沖矢さんに押し返した。
すると、すっと彼は私に握手を求めてきたが、私はぷいっとそれを無視した。
「くく、まさに彼の部下だな。わかりやすい。気に入った。」
「私はだんだん貴方のことがわからなくなってきてます。」
「明日夜また練習するから、店で待ってる。じゃあな。」
ぽんっと頭を撫でた後、頬に唇を添えてきたので、私は慌てて後ろに下がった。
急にほっぺにキスしてくるなんて!
「アメリカ式の挨拶だ。ベイビーにはまだ早かったか?」
「アメリカ人は嫌がる人にもするんですか!?」
「嫌がってたか?」
「沖矢さん、さっきまですごく紳士だったのに最低ですっ!」
物腰柔らかで、優しい人だと思ってたのに。
「あぁ、この顔も変装だからな。」
「…す、素顔じゃないんですか?」
「あぁ。誰にも言うなよ。」
「そんな大事なこと私に言って、いつか降谷さんにはバラしますよ?」
「君とは長く付き合いたい。…な?めぐみ。日本の公安は信頼してる。」
…卑怯な言い方!