第3章 そんなの知らないっ!
そんなに急ぎの資料ならやってやる。と、いうやる気が満ちて…というより、見返したいという気持ちの方が強かったが。
私は髪の毛をぐっと強くまとめ、パソコンにがじりついた。
「精が出るな。」
「…。」
「ん?…おーい。」
「ん?あ、高橋先輩おはようございます。」
集中しすぎて、全然気付かなかったが、横には高橋が座っていて、こちらを見て話しかけていた。
「なんだ、その先輩って。」
「いえ、なんか負けた気がして…。」
「まけた?」
いつもは『早いな!』とか、『もうできたのか。』って他の人には言われるのに、降谷さんには遅いって言われて…。
ギリギリと奥歯を噛み締め、死ぬ物狂いでパソコンのキーをたたいた。
「よし!出来た!!…あれ?降谷さんは?」
私はキョロキョロとしたが、降谷さんはすでに席にはいなかった。
「俺がきた時から居なかったけど。」
「はぁ!?さっきいたのに!?」
あれだけ急ぎみたいな感じ出しといて!?
いやもしかしたら本当に席外してるだけかも…。
「てか、降谷さんはほとんどここねーよ。」
「そうなの?」
「あぁ。なのに、確認して欲しい書類とかデータとかそういうのはいつの間にか見てくれてるんだよな。いつやってるのか謎なんだよ。家かな。特例でゼロは持ち出しオッケーみたいな。」
私は早朝のよれっと疲れていた降谷さんを思い出した。
「…ほんとにすごい人なんだ。」
「ん?」
「いや。うちの上司はまだ謎がいっぱいだなって。」
「そうだな。俺もまだ掴めないし、届かない存在って感じだよな。」