第13章 策略
「お疲れ様、夏目。」
いつも厳しくて、仕事ばっかりで、嫌味ばっかり言う降谷さんはこうやってたまに優しい言葉をくれる。
「…っ。」
「二年間よく頑張った。」
私は降谷さんに背をむけ、流れそうになる涙をぐっと我慢した。
「でも…私は何も…、全部降谷さんが…。」
「僕が小井崎さんの自殺に疑問を持ったのは夏目がいたからだ。」
「…。」
「部下になる捜査員のことは念のため自分でも調べている。過去携わった事件など全部。夏目が自殺だと認定された後も調査していなければ僕は気付かなかった。夏目が諦めなかったからだ。」
「…っ。」
ぼろぼろと流れる涙をもう止められなかった。
「よくやった。」
おでこの辺りを触れてきて引き寄せられた。後頭部が降谷さんの胸に当たり少しふらついた。
「…っ…。」
「泣き顔ブサイクだから、こうしててやる。ふふ。」
「や、やめてくださいっ。」
後ろからハンカチで頬をぐりっとされて、私は降谷さんの方を振り向くと降谷さんのハンカチをパッと奪い取った。
優しいのか不器用なのかわかんないけど、私はそのハンカチで顔を拭きまくってやった。
「きたなっ。」
「返します。」
「洗って返せ。いや、買って返せ。」
「ショッキングピンクでいいですか。」
「いいが、仕事量が変わるぞ。」
「パワハラです。」
「訴えるか?もみ消すぞ。」
「…。」
イタズラっぽく笑う上司にイラッとして、私は下から睨みつけた。
「帰るぞ、夏目。昨日の夕方頼んだ書類をーー…。」
「もう出来て、降谷さんのパソコンに送ってます。」
降谷さんは少し驚いた顔をして私に頭をわしゃっと撫でた。
「そうか。さすが僕の部下だ。」
「上司がせっかちなんで。」
「仕事ができると言え。」
ごつっと拳を頭に落とされ、私は頭をさすりながら、降谷さんの助手席に乗り込んだ。