第12章 キス
私が監視されていたし、今もされているので、ゼロである降谷さんの執務室が今まで通り使えなくなってしまった。
ゼロの存在を他の公安捜査員に知られるわけにもいかないし、だからと言って急に私の仕事が変わってもそれこそ怪しまれる。
なので、ゼロが使っていた執務室はそのまま残し、私もそこを使いつつ、風見班はごっそり移動になった。
「…。」
パソコンの移動やさほど多くはない荷物を抱え、風見さんも部屋を引っ越していた。
ーー…謝りたい。
でも、今も音声は聞かれているのだ。下手なことは言えない。
それに気付いた風見さんは、私の言いたいことがわかったのか、少し口角を上げ首を振ると部屋から出て行った。
『気にするな』って言われているようだった。
私はこのままこの部屋に留まるので、椅子に座りノートパソコンを開いた。
「おー、めぐみ。前頼んでた会議に使う資料できた?」
高橋に話しかけられて私はそちらを見上げた。
もちろん高橋も今私のスマホで盗聴されてるって知っている。
「もちろん。はい。」
「さすが!」
「今データで送るね。」
高橋も横に座って仕事を始めたので、ちらっと彼を見た。
盗聴される前と変わらない態度。
さすが彼も公安なだけある。
「ねぇ…。」
「んー?」
「職場恋愛ってどう思う?」
「…はぁ?」
「やっぱり何でもない。」
ふいっと視線を逸らして自分のパソコンを見つめたが、髙橋はじっと私を見ている。
「何、何かあった?誰かに告白とか?」
にやにや笑いながら言う高橋に私は首を振った。
「違う違う!ちょっと…ふと…なんか思っただけ…だし。」
「じゃあ、何。もしかして俺口説かれてる?」
「はいはい。」